●プロデュースの野原耕二さん、宮内庁式部職楽部の多忠輝さんにインタビューを行いました。
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・初めて雅楽を触れる方に向けて、鑑賞する上でのみどころなどを教えてください。
野原 東京楽所の大和での公演は初で、雅楽が初めての方も多いと思うので、特別に宮内庁式部職楽部の多さんに雅楽の楽器紹介をしていただき、公演を始めたいと思います。一つ一つの楽器についてユーモアを交えながら紹介していただくのでどなたでも楽しめると思います。
・「源氏物語」をテーマに選ばれたことについてお聞かせください。
多 「源氏物語」は物語の中に雅楽がたくさん出てきますので、昔から我々楽人は「源氏物語」に親しみがあります。来年の大河ドラマでも取り上げられ、更に親しみが湧くのではないかと思います。
野原 「源氏物語」は今も色々な書き物が残っており、「源氏絵巻」の世界というと中々想像がつかないと思いますが、まさに大和の公演は「源氏絵巻」の世界が目の前に現れるという内容です。これがポイントになっています。
・東京楽所の魅力についてお聞かせください。
多 宮内庁式部職楽部の半分くらいが東京楽所におり、気の合う人達や弟子、民間の優秀な演奏者が集まっています。他の団体と比べ若い方が多く、非常に「和」のとれた楽団だと思います。雅楽で何が一番大事かと言うと「和」なんです。指揮者がいないため、どこまで「心」が揃えられるか、同じ方向を向けるかが一番大事で、その点では他の団体には絶対負けないだろうなと思っています。
野原 1978年に東京楽所が出来ました。その頃から伝承者が引き継ぐ舞や音楽に加え、宮内庁では中々行わないような新しい音楽にも挑戦できるために、若い方がいたほうが良いということで若いメンバーが多く、幅広く雅楽の魅力を未来へ繋げていくことを見据えたグループだと思います。リーダーの多さんが良いですからね。(笑)
・演奏するうえで大切にしていることは何でしょうか。
多 先程お話したように、一番は「心」を揃えるということですね。自分たちが今まで研鑽を積んできたこと、自分の師匠から教わってきたこと、先達からいただいたことを後世に伝えていくことが僕らの役目です。その形をまた普及させて、皆さんの前できちんとやっていきたいというところが僕らの主旨ですね。
・長い年月、伝統を引き継いでいる雅楽を、「今」(令和)に奏でるうえで気を付けられていること、時代と共に変化したところなどはありますか。
多 例えば現代の作曲家に委嘱して新しい新作雅楽を、東京楽所も昔は色々な所で随分やりました。ただ、それをあまりにやることによって大元の古典の部分が崩れるようではいけない、丁寧に受け継いだものを伝えていかないと、と僕は思っています。皆さん、耳が肥えて洋楽を聞き慣れていることもあり、その中では音程を綺麗にしていくのは仕方がないと思っています。ただそれを主体にすることにより迫力が無くなる、弱々しくなるのは、本来の雅楽の力強さなどが欠けてしまうことになり本末転倒だと思います。そこら辺のバランスが難しいので気を付けています。
・音楽が持つ力はどんなものだと思いますか?
多 自分が他のジャンルの音楽を聴く時には、音楽で助けられたり勇気をもらえたりと色々なことがありました。本当にありがたく、音楽の力はすごいなと思います。ただ、雅楽に関して僕らは職業でやっている部分もありますので、中々その心境にはなれない部分があります(笑)。どちらかというと代々雅楽を継いでいる家柄ですから、自分の息子をはじめ、、楽部や東京楽所の若い人たちにきっちりしたものを次に伝えていってほしいという思いがあります。一種苦行のようなところが多いかなと思います(笑)。
野原 多さんの立場としては如何に継続して未来に繋げていくかが大事なので、その心境はわかります。雅楽の持っている力が何かというと、西暦840年に天皇の命令で日本の音楽をつくりはじめ、150年をかけ990年に完成しました。150年かけてできた音楽文化である雅楽は1000年持つんです。それが根本的なエネルギーの根源だと思います。それだけ時間をかけて編纂した音楽は世の中にないですね。
・公演を楽しみにされているお客様へメッセージをお願いします。
多 「日本の本当の文化って何だろう」ということをまず日本人がわかっていただきだいですし、「日本には雅楽という音楽があるんだな」ということをずっと心に止めておいていただきたいなと思います。
野原 良いホールで、子ども達でも楽しめる本物の雅楽を見てほしいと思っています。公演の前月の10月7日には事前講座も開催します。是非雅楽を楽しんでいただきたいと思います。
★インタビュー全容は近日公開予定