伊藤花りんさんにインタビューを行いました。

ーーーサンドアートを始めたきっかけを教えてください。
もともとはクラシックバレエを幼少の頃から習っていたんです。クラシックバレエの世界は、10代のうちにコンクールで賞を取ってプロになる。という世界なので、プロになるには難しいかなと思い、大学に進学しました。でも、就職活動が始まってからはやっぱり表現する活動がしたいなと思って、何の当てもなく東京に出てきたんです。自主制作映画を手伝っていたんですけど、その仕事の中でサンドアートと出会いました。制作活動の中で、自分でもパフォーマンスをしてみたい。という軽い気持ちでサンドアートを始めたんですけど、いろいろな人との縁でだんだん仕事になっていって、今に辿り着いた感はありますね。
ーーーサンドアートを始めた頃と、今とで変わったことはありますか?
昔の作品を見ると、絵が下手だな。と思うんですけど、作品の作り方は大きく変わっていないかなと。絵は、サンドアートを始めてから習いに行って、やっぱりちゃんと勉強してからの方が良くなっています。実は今もずっと通っていて、昔から美術は好きなんです。
ーーークラシックバレエとサンドアートでつながっているなと思うことはありますか?
一番大きいのは、音に合わせて描いていくということですね。バレエをやっている時と同じ感じで音を取っているので。やはり生の音を聞きながらの作業は、クラシックバレエから続いていると思いますね。そこで勉強してきたことを、そのままやっている感じです。
練習もバレエと同じで、本番中に楽譜のようなものを見ることは出来ないので、まず身体に入れて、音に合わせて覚えていくんです。絵を描いているんですけど、パフォーマンスしている時と同じ感覚です。
ーーーサンドアートはどんな練習をするのでしょうか?
これもバレエと似ていて、ステップを繰り返し練習するように「ここは描くのが難しいな」と思うところをピンポイントで練習して、そこを詰めてから音に合わせて全体を通してみます。そして、また気になったところを反復して、という感じです。作品の難しさによって、練習量はマチマチですね。新しく作った作品は覚えるまで、結構時間がかかったりしますし、音が早くて、早描きで作ったものは、練習しないと本番緊張しすぎちゃいますし、練習しておかないと本番で出来るか不安になってしまうので、繰り返し練習しています。
ーーー季節や気候によってサンドアートがやりづらい時はありますか?
冬は乾燥しすぎて、静電気が起きると厄介なんです。静電気が起きると画面に砂が残ったりするので。湿気は気にならないですね。砂はサラサラの方がいいんですけど・・・。
ーーー砂へのこだわりはありますか?
オーストラリアの砂を使っています。いろいろと試したんですが、今は白い砂を選びました。最初はもっと濃い色を使っていたんですけど、濃い色だと陰影が付きづらいんですよね。おそらく、昔の作品と今の作品を比べると、色が変わっていることに気づくと思いますが、白い砂だと陰影が幅広くなるので、影の演出がやりやすいんです。
ーーー砂で絵を描くとき、どうやって表現しているのでしょうか?光を通して作品を映し出すんですけど、砂の厚みが増えるほど暗くなって、乗っている量が少なくなると薄く明るめの色になります。砂を乗せる量によって、幅広くいろいろな表現ができるようになります。その代わり、砂がとても細かくないと線にならないんです。砂が細かいと集合させやすく、濃い線が描けるんですが、粗いと集合させにくく濃い線にならないんです。昔は何時間もかけて自分で砂をふるって細かい砂を選別していたんですが、今は名古屋の会社が協賛してくださっていて、細かい砂を作ってくれています。
ーーー砂はずっと同じものを使えるのでしょうか?
人の手の脂とかがついて、ずっとは使えません。作品を描くとき、砂が一定の速度で落ちることが実はとても大事でなんです。汚れてくると、きれいに落ちなくなりますし、古い砂と新しい砂を混ぜてしまうと感覚がズレてしまうので、砂を替える時はまとめて取り替えますね。ただ、古くなった砂は洗って焼き直ししてもらうと、また使えるようになるんですよ。
ーーー作品を描くときに使っている砂の量はどのくらいですか?
3kgぐらいです。
ーーー生演奏でパフォーマンスにこだわっている理由は?
おそらく子どもの時の経験が強いかもしれないです。バレエの公演ではオーケストラが入っていて、開場前の音合わせや、生演奏に合わせて踊っているのを見ると、お客さんの立場としてワクワクします。そんな経験もあり、やっぱり生演奏で作品を一緒に作れるっていうのが好きですね。今回参加するバンドネオンやギターなどの音は、少しノスタルジックな雰囲気を作ってくれます。サンドアートの作品はセピアな色合いなので、音楽の雰囲気にしても、音の流れにしても、物語性のある作品とはとても相性が良いと思います。
ーーー作品をつくる時、描く場面はどのように選ばれていますか?
最初はどうしても入れたい場面を入れるところから始めます。「ここは絶対に外せない!」みたいな。次にどういう風に絵にするかを考えますね。台詞がなくて絵でしか見せられないので、いかにそのシーンを台詞がなくても伝わるようにするのかは工夫のしどころです。事前知識があるような、とても有名な童話であれば省けるかもしれないですけど。ちょっと難しいかなと思うのは、絵のつなぎ方で物語が進んでいるように見せるかが大切だと感じています。いまだに難しいなと感じていますが・・・。
ーーーこれまでどのくらいの作品を作られましたか?
100以上は作っていると思います。企業作品もあるので。一回しかやっていない作品もたくさんあるんです(笑)。普段、自分発信では描かないような要望もあるので、今後に活かせる新しいアイディアを思いつくこともあります。
ーーーこれまでの作品の中で、印象に残っているものはありますか?
何を重視するかによって変わってくるんですけど・・・。生でやっているので、この作品が良いというよりは、その時その時の感覚で上手くいった。とか、演奏や効果音とのタイミングなども含めて、狙った通りの手ごたえがあった時は印象に残っていますね。
ーーーご来場されるお客様にメッセージをお願いします。
音楽と絵が一緒に進んでいくので、物語を観ながら、音楽と一緒に楽しんでいただきたいなと思います。あと、さまざまな楽器が出てくるので、今までに聞いたことのない音だったり、絵に合った音楽や効果音が入ってきたりすると、より作品の世界が広がると思います。内容的にも、物語が分からなくても見られると思いますし、年齢が違っても一緒に楽しめる作品になっていると思うので、ご家族、友人、みなさんで一緒に来ていただけると嬉しいです。
