【講師の金城まみさんへインタビューを行いました】

Q:シズルボードを始めようと思ったきっかけを教えてください
チョークアートの魅力を多くの方に知ってもらいたくて、2017年に南林間で小さな「チョークアート&フラワーショップ」をオープンしました。店舗で告知用に看板を手描きしたいと思ったものの、オイルパステルを使用するチョークアートは時間がかかりすぎてしまう。そこで「描いて消せる」「短時間・低コストで描ける」看板を自分の手で突き詰めた結果、シズルボード誕生に至りました。チョークアートで使うチョークには3種類あり、1つは学校のチョークで、貝殻が原材料の白墨。1つはオーストラリア発祥のオイルパステル。これは、オイルと顔料が原材料で油性のため消えないんです。もう1つは水性のキットパスで、シズルボードで使用しているものです。シズルボードのベースはオイルパステルで描くチョークアートで、消せる手軽な画材のキットパスに置き換えたものです。キットパスはウェットティッシュなどで簡単に消せるのがいいところです。
Q:シズルボードの名前の由来を教えてください
2018年に「イージーボード」という名でスタートしました。2020年により魅力をダイレクトに伝えるために「シズルボード/シズル看板」に名称変更。「"シズル"(五感を刺激する臨場感)」+"ボード(看板)"で「シズルボード/シズル看板」という意味が込められています。
Q:描くときに心がけていることはなんでしょうか
ポイントが二つあります。一つが「五感に響く"シズル感"」で、湯気や水滴、揚げ物のサクサク感などをしっかりと表現することです。「五感」とは、思考を通さずに思わず動いてしまうことをそのように呼んでいます。文章で説明されると疲れてしまったり、冷静になってしまって手に取らなかったりしますが、絵を見た瞬間に、数秒の「わぁ!美味しそう!!」というのは「思わず」なんですよね。その衝動に近づけるには、五感へのアプローチが有効で、温かそうとか、みずみずしいとか、サックリしてそうとか、梅干しを食べたときに酸っぱくなってしまって口の中に唾液が出るみたいな。それを絵で表現して"シズル感=臨場感"を出せるようにしています。
二つ目が、「訴求力と効率」です。短時間で消せる画材の相性、発色、レイアウト、文字のサイズなど、実践で検証と改善を重ねています。お客さんからの反応は実店舗での反応をチェックしながら研究を重ねました。
Q:シズル感を出すために心がけていることはなんですか
キットパスやホワイトペンなど、描き心地と発色のいい画材の組み合わせを独自で検証しています。また、五感を刺激する質感"ふわふわ感・こんがり感"や"熱々・冷え冷え""サクッと感"などを描き分けています。レイアウトと文字設計も大切で、「文章の黄金比」や"読ませる構成"など、視線誘導と情報の伝わりやすさに配慮しています。
Q:シズル感を描くコツはありますか
日々の生活の中で美味しそうなものに敏感で、特にテレビCMを見るたびに美味しそうだなって思うんですよね。サラダの野菜が水にぴしゃっと入る瞬間とか、卵を割った瞬間とか、CMがヒントになっています。CMという短い時間の中で、その瞬間を切り取って何秒勝負の"シズル感"を出しているじゃないですか。すごく参考にしているんです。
それと、お客様の反応を重視しています。自分の中ではそんなにいいと思っていないものでも、お客さんからいい反応をもらえたら、そういうのがいいんだっていう感じで。看板としての訴求力につながるために、何が目的かというところを客観的に見た方がいいなと思っていて。そのために自分でやっていたショップでも店頭に看板をおいて、今回のワークショップは満席になったなとか、きれいに描けたのに全然申し込みが入らないワークショップがあったりと、逆に整いすぎていたのかもしれない、訴える力は絵の上手さではないということに気づいたんです。思わず読んでしまう、見てしまうというのが大事で、なんか綺麗だね、で終わらないことが大事。なので、絵のクオリティだけじゃなく、どんな言葉を入れるのか、短くポイントになる文章をぽんぽんぽんと配置して見やすくするというのも大切ですね。
Q:シズルボードを描くことが苦になることはないのですか
苦になることはないのですが、毎回反省はします。毎回その時の自分にできる最大限の力で取り組みますが、あとから振り返ると、もっとこうしたらよかったのかもと思うので。決して手を抜かず、最大限やったつもりではあるけど、やっぱり反省は常にあります。振り返って自分が成長すると、もっとこれができたのかもって思えるので。それは成長したんだなって感じられます。ご依頼いただいたことへの責任感もありますし、自分に対してかけているプレッシャーが常にあります。でもなんていうんでしょうか。だからこそやりたいんでしょうね。
Q:シズルボードの魅力とはどんなところですか
「思わず食べたくなる」ビジュアルが人の足を止め、描いて終わりではなく、たくさんの人に美味しそう!ワクワクする!絵と重なって思い出が蘇るなど、描き手と見る人によって完成されるところが魅力です。手描きの温もり、その人にしか出せない魅力あるボードになるところもポイントです。
Q:今まで描かれた中で、一番良かった作品はなんですか
基本全部ですが、南林間にあるお蕎麦屋さんの看板は思い入れがあります。もともと個人的にそのお蕎麦屋さんがすごく好きで、よく行っていたんですよ。そこは手描きで文字情報だけ書かれたボードだったので、ずーっとシズルボードを置いたらどうかなって思っていたんです。いざ描かせてもらった時には、自分の中で毎回食べながら思っていたイメージが完璧にできていて。だから、ようやくそれが形になったし、これをずっとやりたかったんだよなって思って。 夢が叶って嬉しかったです。
Q:シズルボードを通じて体感してほしいことはなんですか
描く"高揚感"を味わうことです。描いている最中から"五感に響くボード"を作る喜びを得て、見る人との共鳴(看板を通してされる会話)の喜びをリアルに感じてほしいです。今回は制作したボードの展示がありますので、ご覧になられている来場者の反応や会場の空気感も楽しんでほしいです。
Q:参加を検討されている方々に一言
「絵が得意じゃないんですけど...」よく聞く言葉です。でも、シズルボードに必要なのは"やってみたい"という気持ちだけ。きっと「わ!すごい!」「こんなの描けるんだ!」と自分の中の意外な一面に出会えます。楽しさと手ごたえを、両方味わえる、そんな、ちょっと特別な体験をしてもらえたら嬉しいです。あなたの世界観が誰かの心を動かす。その瞬間を、ぜひ一緒に体験しましょう。